音楽&薬草bar Scivias

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アコーディオン

スイスの即興アコーディオン奏者JONAS KOCHER。

ライブを見たのは滋賀県近江八幡の酒遊館。

その日はラップトップのdinciseがPCのトラブルのためオブジェクト(音具)のみの演奏で、PAなしのアコースティックなライブとなった。

このことが功を奏したのか分からないが(PAありのセッションを聴いてないので)キーの軋みまで細かく聴いていくような顕微鏡的な聴取体験となり、貴重な経験となった。

一つの音を引き延ばすアコーディオンの音色は、ピッチの高低による運動をなぞる聴き方でなく、引き延ばされた音の微細な揺らぎに耳がフォーカスしてゆきミクロな音響へと誘われてゆく。

とくにおもしろかったなのが、目を皿のようにして細かく見るような神経質に細かい音を聴いていく緊張感のある耳の状態が続くと、耳の力がフッと抜けるような脱力した状態になったことだった。

幽体離脱したかのように、全体の音を俯瞰で眺めるような聴き方になるのだが、細かい音を一つ一つ丁寧におっていく状態が同居する不思議な体験だった。

ひょっとしたら俯瞰て眺めるマクロな視座と、顕微鏡を覗くようなミクロな視座を、行ったり来たりしていたのかも知れない。

JONAS KOCHERのディスクを聴くと、生で聴いた体験とは違うのだが、脱力しながらも、細かい音が鮮明に現れてくるような聴覚体験になることが多々ある。

窓の外から聞こえる車のエンジンや空調の音、冷蔵庫の唸り、グラスに氷があたる音など、今までたいして気にもならなかった音たちが、色彩を帯びて現れてくる。

しかし、それらの音が神経症のようにストレスになるのでなく、意識が中空に放り出されボーッとして弛緩した状態になっている。

自意識が気化し、楽曲の物語や構造などの意味を探るのでなく、只々現れる音をおって散歩するような、気楽で脱力した音との関係が楽しい。